3行でわかる!この記事の要約
- 実務誌すらスルー(?)するルール:ネットで検索しても原文が出ず、戸籍実務のバイブル『戸○時報』にすら未掲載の「平成28年8月4日事務連絡」。なぜ、この運用が定着せず、実務を翻弄している理由を考察。
- 「一律不可」の嘘:単に「原則不可だから」と諦めるのは誤りと思われる。「医療同意等」における具体的な正当事由の組み立て(切り分け)と、事務連絡は行政内部を縛るのみで裁判所を拘束しないという注意点あり。
- 一次情報を求めて法務省へ凸:伝聞や二次情報の孫引きで論評する危うさを排し、自ら「本丸の一次情報」を引きずり出すべく、法務省へ情報開示請求書を投函したリアルタイムドキュメンタリー!

成年後見人に就任したら、被後見人の推定相続人の戸籍は取得できるのですか?

医療同意をする方を探す場合などはできそうですが、確定的なことはまだ言えません。
成年後見実務に携わっていると、定期的に現場を悩ませる「戸籍収集の壁」という問題があります。
「成年後見人になったんだから、本人のため(将来の相続人把握や死亡後の対応など)に、生存中の推定相続人(兄弟姉妹等)の戸籍くらい取れるでしょ?」
そう思って自治体の戸籍窓口に乗り込めば、突如として冷たい(?)言葉が返ってきます。
「あ、後見人さんには生存中の推定相続人の戸籍を取る固有の権限はないので、交付できません」
……現場でこれに撃沈した司法書士や後見人は少なくないはずです。
そして、窓口が拒絶の根拠として(あるいは実務の噂として)影でチラつかせてくるのが、知る人ぞ知る「平成28年8月4日付け法務省民事局民事1課前野補佐官発の事務連絡」という存在です。
今回は、この謎多き事務連絡の「実務での使いこなし」と、専門誌すらスルーしているという怪奇現象(?)、そして「一次情報がないなら法務省から引きずり出すまで」と実際に動き出したドキュメンタリーをお届けします。
原則ダメ? 一律不可ではない「場合分け」のキモ
まず、この事務連絡の前提となる法理を整理しておきましょう。
原則論として、被後見人が生きている間、後見人の権限はあくまで、本人の財産管理及び身上保護に限られます。
したがって、無条件に戸籍収集できるわけではなく、また「念のため親族関係を把握しておきたい」という漠然とした理由で、生存中の推定相続人の戸籍を取得する「固有の権限」はありません。プライバシー保護の観点からも、これはやむを得ない取り扱いでしょう。
ここで実務家(あるいは市民後見人)の対応は極端に二極化します。
- イケイケ派:「後見人だから、いずれ財産を引き渡すのだから、相続人調査のためなら取れて当たり前」と果敢に突撃。

これは爆死してしまうねぇ…
- 諦め派:「原則不可と考えなければならないから、もう手出しできない…」とあきらめる。

有事の際、困ってしまうねぇ…
界隈で噂の「事務連絡の趣旨」をざっくりおさらいしてみる ※ネット情報のまとめ
しかし、この通達の要はその中間にある「場合分け(正当事由の立論)」にあります。
事務連絡が示しているのは「一律絶対にダメ」ということではないようです。
「医療同意が必要な場面」や「将来的に医療同意や緊急連絡が必要になることが具体的に想定される場面」など、本人の身上保護に直接リンクする局面であれば、戸籍法上の「正当な理由」として成立し得るというのがこの通達の趣旨だと思われます。
つまり、窓口で門前払いされたときに「通達でダメと言われたので…」と引き下がるのではなく、「なぜ今、本人の保護のためにこの親族の特定が必要なのか」を具体的な理由として言語化できるか。ここにプロとしての腕前が問われるわけです。
お断りしておきますが、この章で解説する内容は「あくまでネット上に転がっている情報の寄せ集め(二次情報・伝聞)」に過ぎません。

「おいおい、プロの司法書士のくせにネットの噂レベルで語るのかよ? なんだその腰の引けた弱気な姿勢は!」
とツッコミを入れたくなった皆様、どうかブラウザバックしないでください。
なぜ、私がここまで及び腰で、慎重すぎるほど慎重に予防線を張りまくっているのか——。
その「真の理由」は、このあとの章で明かされることになりますので、どうかお付き合いの程よろしくお願いいたします。
『戸○時報』にすら載ってないってどういうことよ!
と、ここまで謎の通達について語ってきましたが、ここで一つデカイ愚痴を言わせてください。
「いやね、こんな実務の超重要ルール、ネットで検索しても原文が出てこないのは百歩譲って許すとしても……あの『戸○時報』にすら載ってないってどういうことよ!!(笑)」
実務家ならご存じの通り、戸籍実務のバイブルといえば、あの書籍です。重要な通達や先例があれば、だいたい解説付きで掲載され、業界の標準になっていきます。
しかし、ネット空間を漁ってみても、この「平成28年8月4日事務連絡」は専門誌にすら取り扱いが見当たりません。「前野補佐官発の事務連絡」という、通達(局長・課長通達)よりもさらにマニアックな「行政内部の取扱い指示(指導)」のレベルで留まっている可能性が高く、その結果、書籍でも取り上げられないのではないかと推測します。
専門誌にも載っていない、ネットにも一次情報(原文)がない。
これでは全国の司法書士も自治体窓口も、「噂」や「伝言ゲーム」で実務を回しているようなものではありませんか。この状況は、非常にまずい。
【余談】ネットの解説記事と一次情報の謎
ネットで検索すると、この「平成28年8月4日事務連絡」について言及されている司法書士の先生方の記事もチラホラ見かけます。
もちろん、みなさん然るべきルートで原典(一次情報)をしっかりご確認された上で、深いご考察を展開されているのだとは思うのですが、専門誌に掲載がなく、ネットにも一次情報が転がっていない中で、いったいどのようにして原典にアクセスされたのか、純粋に気になるところではあります(笑)。
最後に述べる、私と同じ手法で原典を収集しているのか、もしくはサブスクの先例検索で引っかかってくるのかな?
通達は「絶対」ではない――裁判所を拘束しないという視点
ここで、私たちはもう一つ原点に立ち返り、念頭に置いておきたい非常に重要な法律学の根幹があります。
仮にこの事務連絡の内容(原則不可・医療同意等は正当事由になり得るという均衡)に合理性があり、裁判所も将来的に追認する可能性が高いとしても、「通達(事務連絡)は行政内部のルールに過ぎず、裁判所を拘束しない」という点です。
私たち司法書士は、日頃の登記実務の癖で「先例=絶対」であると思いがちです。
もちろんそういう面も大事にしないといけない話なんですけど、戸籍法上の「正当な理由」に該当するかどうかの最終的な判断をするのは、法務省(行政権)ではなく裁判所(司法権)です。
- 行政を動かすためのツールとして通達や事務連絡を使いこなす知識。
- 裁判所で争われた場合にどう評価されるかという法的思考。
この二層構造を頭の中に持っておくことこそが、「通達が出てるからOK」という思考停止に陥らないために必要であると私は考えています。
【決断】ネットにないなら、本丸に切り込むまで!
一次情報すらあいまいな先例に振り回されるのは業界としてよくないでしょう(ちょっと主語が大きいかな?)し、そんな伝聞や二次情報にいつまでも付き合わされるのは、法律家としてどうにも収まりがつきません。
「専門誌にもネットにもないなら、法務省から直接原文を引っ張り出すしかないよね?」
というわけで——。
私は、昨日(2026年10月28日)、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づき、法務省宛てに「情報開示請求書」をポストに投函いたしました!
あの「平成28年8月4日付け法務省民事局民事1課前野補佐官発の事務連絡」の生データを、直接法務省から取り寄せて自分の目で検証してみようという試みです。
さあ、どうなるか?
- パターンA:無事に原文が開示され、その論理構造を徹底解剖できる(超実務的展開)
- パターンB:まさかの「該当する行政文書は存在しません(不存在)」と返ってくる(今までに書かれたブログ記事は都市伝説だったという展開)
- パターンC:見事な真っ黒のいわゆる「のり弁(不開示)」が届く(これが国家機密なんだろうか?)
どの回答が来ても、ブログ記事としては100%オイシイ展開なのであります(笑)
開示決定通知書(あるいは衝撃の決定)が届き次第、続報として【後編】でお届けいたします。全国の司法書士の皆様、そして後見実務に関わる皆様、!

後編へ続きます
ちょっと宣伝!当ブログの人気記事です。
塩基大納言絵巻episode5 