名古屋市名東区の司法書士 酒井健のブログ

開業司法書士のミニマル戦略

補助者
補助者

スタートアップの司法書士が採る戦略にはどのようなものがありますか?

本職
本職

私は、「ミニマル戦略」をお勧めします。

この記事は、新たに司法書士事務所を開設する方向けに書いておりますが、そのほかの起業をされる方への参考になればと思います。

私は(勝手に)司法書士のスタートアップを応援します。

免責事項

細心の注意を払って情報を掲載しておりますが、この情報の正確性および完全性を保証するものではありません。また、2023年時点ではまだまだ半導体不足等で価格変化が大きい状況ですので、備品のご購入の際はご注意ください。

なぜミニマル戦略が必要なのか?

ミニマルとは?

Minimal(ミニマル)とは、「最小限であること」という意味があります。

ここでは、スタートアップの司法書士の経営戦略として、初期投資を最小限にとどめ、ランニングコストを下げ、効率的に利益を獲得する方針を指します。したがって、例えば積極的に人を雇ったりするなどして、当面は大規模な収益は狙いません。

私がミニマル戦略をお勧めする理由

司法書士は、比較的初期投資の少ない産業とされていますが、それでも少なからず初期投資が必要になりますし、ランニングコストも必要となります。
私も開業時、「司法書士の経費なんて会費程度のもんでしょ?」と思っていましたが、なんだかんだで出費はかさむものです

開業から数年は減っていく銀行預金残高を見ながら胃の痛い日々を送るわけです。

また、小さく始めたものの規模を大きくすることは簡単ですが、大きく始めたものの規模を縮小することは、精神的になかなかの困難を伴うこともミニマル戦略を採用する理由の一つです。

以上のとおりですので、私は司法書士の開業は、ミニマル戦略をお勧めします。

もちろん、開業後仕事が多く回ってくることが見込まれる方ではあれば、最初から大規模投資をし、大きな収益を狙う戦略もあると思います。

具体的なミニマル戦略

司法書士は国家から独占業務という特許が与えられた立場ですので、好き勝手やるわけにはいきません。

ここでは法令及びその精神が認める範囲内でのミニマル戦略を練っていきましょう。

事務所

司法書士の義務として、事務所を開設する義務があります。もし、事務所を借りるとなると結構な出費となりますから(おそらく人件費の次くらいの経費になると思います)、慎重な判断をしたいところです。

スタートアップの司法書士の事務所の候補としては、次のようなものがあるでしょう。

賃貸事務所

一般的なイメージとしては、賃貸事務所を借りて開業するイメージが多いかなと思います。

しかしながら、都会であればあるほど事務所賃料は高額になる傾向にあります。事業用の賃料は、地味に消費税の課税対象ですし…

そのため、ミニマル戦略では可能な限り賃貸事務所を借りないようにするか、借りたとしてもワンルームの賃料が安いところしたいです。いきなり大通りに面したガラス張りの事務所はミニマル戦略とは相容れないと思われます。

自宅

ミニマル戦略に最もマッチするのが、自宅で開業することです。なんといっても追加の出費がありません。

持家であれば当然家賃0でしょうし、賃貸住宅であれば賃料の一部を経費にすることも可能です(家事按分)。

なお、賃貸借契約内で事務所利用を禁じられているのにもかかわらず、事務所として利用することは、用法違反となり立ち退き事由となりえますのでご注意ください。

シェアオフィス

近年都市部にシェアオフィスが増えてきました。オープンスペースのフリーアドレス席であれば、けっこう安く契約できるようです。
シェアオフィスですと、電気代水道代は込みの料金ですし、飲み物代も込みのところもあるようです。また、副次的な効果ですが人間関係の構築もひょっとすると期待できるのかもしれません。

ところでシェアオフィスの中には、オープンスペース型と個室型がありますが、司法書士の開業としてはどちらがいいのでしょうか?
個人的な見解ですが、個人情報を扱う業種であるため、少なくとも個室でなければならないと考えます。
オープンスペースのシェアオフィスと比べて賃料が高くなる傾向がありますが、個室があるシェアオフィスを検索してみてください。

また、念のため、契約上、事務所登録が許容されているのかも確認してください。

本職
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検索で、「シェアオフィス+地名」で検索すると出てくるはずです。

知人宅

こちらも賃料が低く抑えられます(あるいは無料)のでミニマル戦略にマッチしておりお勧めできます。利点は自宅での開業とほぼ同じかと思います。

一方で、所有者との人間関係を良好にしておく必要があります。

またこの場合、郵便物やメール便がちゃんと届くような体制を作っておくことをおすすめします。郵便は比較的届きやすいのですが、メール便などは迷子になるケースが多い気がします。

本職
本職

市町村によっては、スタートアップ用の事務所を用意しているところもあるようなので、探してみてもいいかもしれません。


パソコン・プリンター

こちらについては、既に記事にしていますので、併せてご覧ください。

また、QRコードリーダーがあると何かと申請の時に便利です。AMAZONで中華製の安価なリーダーがありますので、導入してみてはいかがでしょうか?

こんな記事も書いています。

申請用総合ソフトとQRコードリーダーを接続する方法

机・椅子

事務作業をするための机と椅子は必須ですので、事務所に備え付けのものがなければ購入しなければなりません。

他のブログの記事を見ていると考え方が分かれるところではありますが、私の見解は次のとおりです。

机に関しては、ニトリ、IKEAやアウトレット家具にある机でなんら問題ないと思います。できれば広い机の方が作業効率はいいのですが、そこは部屋の広さとの相談になると思います。

椅子

某サイトでは1万円くらいの椅子で問題ないとありましたが、私はその見解に異を唱えたいと思います。

司法書士は、事務仕事で長く椅子に座るため、椅子にだけはお金をかけていいと考えています。また可能な限り実際に座ってみて決めた方が良いと思います。

ちなみに私が使っているのは、飛騨産業のSEOTO-EXです。飛騨産業のアウトレット品で、7万7000円くらいだったかと思います。ちなみに作家の村上龍氏によると「立ち上がりたくない椅子」だとか。

SEOTO-EX セミアームチェア(板座) ウォルナット
本職
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飛騨産業のアウトレット館については、気が向いたときに記事にしたいと思います。


自動車

司法書士は何かと移動することが多い業種ですので、移動手段の確保が必要不可欠です。

都会か地方か

首都圏であれば、必ずしも車は必要ではないかと思います。
むしろ電車移動の方が渋滞が回避できて早かったり、電車内で軽い作業ができたりします。車の本体価格だけでなく、駐車場代・ガソリン代などの維持費が浮かせます。

一方で地方では車での移動が前提となっている町も数多く存在しており、そのような場所では車を持たざるを得ないでしょうし、既に持っているのではないでしょうか?

実際のところ、名古屋市内であればギリギリ車なしで、地下鉄とバス移動でなんとかやって行けてます。逆にいえば、名古屋以下の人口規模の町では、車がないと厳しいのかもしれません。

カーシェアリングという選択肢

昨今では都市部や地方都市の駅前にカーシェアリングサービスが展開されることが多くなってきました。

車を持たずに必要なときに借りることができますので、私もしばしば利用しています。

難点を言えば、週末や夏休みなどは競合して借りにくいことでしょうか?
また、返却時間が決まっていますので、どれだけ時間がかかるかわからない相談などにカーシェアで行くと、時間を気にすることになるので、何かとひやひやします。

車を持たないのであれば、カーシェアリングの利用も検討しておくといいと思います。


通信

スマホ

ミニマル戦略となると今使っている携帯電話を継続利用し、事務所の登録番号とすることになるかと思います。

なお、個人的には時間無制限の通話定額制のプランに入ることを強くお勧めします。5分かけ放題ではなく、完全かけ放題の方です。

これは必要な経費だと考えますし、格安SIMの完全かけ放題プランであればそれほど高くはありません。私自身も格安SIMを長年利用していますが、格安SIMであっても通話品質に問題を感じたことはありません(ただし、楽天モバイルのラクテンリンクを利用した通話は不安定さを感じました)。

ところで「固定電話回線ひかないとFAXは大丈夫なの?」と思われるかもしれませんがご安心ください。次の項目でお話しします。

FAX

メールがこれほど発達した現代社会においても、日本のビジネス、とりわけ司法書士業界では、FAXによる書類のやり取りが行われています(少しずつ変わりつつありますが)。

従来は、固定回線を引いて、FAXの送受信機を備えないとFAXは送ることはできませんでした。

しかし、現在はインターネットFAXというサービスが何社からか提供されています。これはFAXの送受信がパソコン上で完結することができます。当然、固定電話回線の開通も不要です。

極端に言えば、来たFAXに対して、印刷することなく返信することも可能ですから、出先からもFAXでの返答を送ることができるので、大変便利です。

ミニマル戦略では、インターネットFAXの利用をお勧めします。

本職
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インターネットFAXで検索すると比較サイト等もあります。細かな条件が異なりますので、ご自身に合った会社を契約してください。

光回線(光インターネット)

司法書士にとって(というか全人類にとって)インターネットは必要不可欠なものとなりつつあります。

そこで、通信をどうするのかについて検討する必要があります。

もしWEB会議の利活用を想定しているのであれば、光回線を引いた方が良いと思います。一方で、ある程度まではスマホのテザリングで代替できる可能性も高いです。

とりあえずスマホのテザリングでカバーして、必要に応じて光インターネットを引くのがいいのかなと思います。


会計ソフト

特に青色申告を予定している方については、会計ソフトの導入を強くお勧めします。

個人的には、弥生会計オンラインをお勧めします。1期目は別の会計ソフトを利用していましたが、弥生会計オンラインの方が初心者には使いやすいように思います(1年目は無料ですし)。

弥生会計に限らずオンライン会計ソフトは、領収書を写真で撮影し、そのデータから情報を読み取り経費計上するだとか、クレジットカードや預金口座に紐づけて売上管理や経費計上ができるなど、とても多機能で便利です。

ただし、会計ソフトを使い場合でも、複式簿記の仕分けくらいはできている状態が望ましいので、時間のある時に簿記初級(旧4級)程度の知識をマスターしておいた方が良いかと思います。でないと、ソフトを使う際に何が何だかわかりませんので。実務では、事業主貸とか事業主借とか出てきますし…

もっとも大切なこと

体と心の健康

私は煙草を喫みませんが、独立すると煙草の量が増えるという話も聞きます。間食を止める人も環境もありません。会合でお酒の席も多くなるかもしれません。

以上のとおり、自制しなければならないことが多くなるように思います。

また、勤務時代は、安全配慮義務の一環として、健康診断を受けさせられてきたかもしれませんが、自営業だとそれもありません。

大病をし、長期離脱となると事務所経営が立ち行かなくなりますので、できれば定期的な人間ドックの受診をお勧めします。
また、定期的にリフレッシュするなどの工夫も必要だと思います。

やらないことを決める

ミニマル戦略では一人ですべてをこなすことを想定しています。そうするとできることは限られていきます。

以上の事から、「できないこと」はやらない、「やりたくないこと」についてはできるだけやらないで済む方法を考えるのが良いのではないかと思っています。

営業一つとっても、飛び込み営業からWEBマーケティングまでいろいろ手法がありますので、ご自身の適正に合わせて選択するのが良いと考えています。
ちなみに私は、飛び込み系の営業は苦手だし、私がやられたくもないのでやっていません。挨拶した後に話すことがないですからね。

仕組みを後で変えることは困難

例えばファイルを管理することの一つとっても後々変更することは次第に難しくなっていきます。

最初から体制を整えてと言うのは難しいことは承知の上ですが、最初の体制について練っておいて、できるだけその体制を維持することが良いと思います。

特に一人でやるということは、物事の効率化することも大事な作業になります。

本職
本職

お金の面で胃が痛い日々を過ごしてはいますが、独立して良かったと思っています。

前の職場環境はいい環境ではありましたが、今から勤務に戻りたくはありません。独立すると皆さんもそんな心境になるのではないでしょうか?

にしても金がない…(笑)