名古屋市名東区の司法書士 酒井健のブログ

株式会社と合同会社どちらがいいのか?

補助者
補助者

個人事業主が法人化をする場合、株式会社と合同会社のどちらを選択するのがいいのでしょうか?

本職
本職

合同会社の方が運営コストが安いので有利なのですが、他の要素も考えなくてはいけません。

この記事では、株主が1名の会社を前提として解説してゆきます。

免責事項

細心の注意を払って情報を掲載しておりますが、この情報の正確性および完全性を保証するものではありません。執筆時時点の法令を前提に記事を作成しており、法改正等によって結論が変わる可能性もあります。
なお、予告なしに、掲載されている情報を変更することがあります。


株式会社の利点

間接有限責任

株式会社の大きな特徴として、出資者は間接有限責任しか負わないという特徴があります。

間接有限責任とは、会社が赤字になって倒産したとしても、出資者(株主)は出資した金額を失うだけで、会社の負債を負わないということです。

ただし、経営者と会社が連帯して債務を負う場合もありますので、その場合は経営者も責任を負うこととなります。

信用の高さ

「会社」と言えば株式会社で、「合同会社」ってなにと言われる方も多いです。

またかつては資本金1000万円と出資者7名を揃えられないと株式会社の設立が認められない時代もあり、そのイメージの良さは今日まで続いていると思われます。

また、株式会社の運営手続に関して、法定されている事項が多く信用があるという見解もありますが、株主が1名である会社は結局その1名だけで決定すればいいだけのことですので、社内手続きが面倒くさいということはないでしょう。

法人であること

株式会社も法人ですので株式会社を設立することで得られる節税のメリットや厚生年金の加入といったメリットにも対応できます。

経営の自由度について

株主が1名である会社については、結局その1名だけで決定すればいいだけですので、経営の自由度は低いとは言えません。

合同会社の利点

間接有限責任

株式会社と同じで、間接有限責任とされています。

設立コストの低さ

会社の設立時に必ずかかる費用は下記のとおりです。

事柄株式会社合同会社
定款認証手続約55,000円不要(0円)
会社設立登記150,000円60,000円
合計約205,000円60,000円

このように設立時の手続を比較すると15万円程度の差があります。

ただし、個人的には合同会社の設立手続きは司法書士への依頼をお勧めしていますので、司法書士が関与する合同会社の設立と自分で行う株式会社の設立を比較すると、優位性が揺らぐところではあります。

運営コストの低さ

運営コストと言っても色々あるところですので、順番に見ていきましょう。

決算公告義務がない

株式会社には決算後、その内容を公告をする義務がありますが、合同会社にはそのような義務はありません。もっとも、株式会社でも決算公告をしていない会社もあるとかないとか…

ちなみに株式会社の官報公告料金は次のリンクを参照してください。

役員任期がない

株式会社だと、取締役や監査役は最長で10年の任期があり、10年経過時には再任の登記が必要です。

だいたい司法書士に依頼すると5万円程度の費用が掛かります。この登記を怠ると科料に処せられる可能性があります。

一方で、合同会社には任期がないので再任の登記は不要で、辞任や退任をしない限りは登記義務は生じません。

なお、過料とは何かについては、次の記事をご覧ください。

法人であること

株式会社と同じです。

比較表

株式会社と合同会社の特徴を比較すると次の表のとおりとなります。

事柄株式会社合同会社
設立コスト割高割安
決算の公告必要不要
役員任期最長10年任期なし
信用一般的に高い高いとは言えない
経営の自由度低いとは言えない高い
責任形態間接有限責任間接有限責任

ご覧のように、コスト面を考えれば合同会社のコストパフォーマンスはかなり高いと言えます。

しかし、まだ考慮すべき事項があります

取引先との関係

私も最近まで知らなかった話なのですが、業界によっては「株式会社以外とは取引しない」業界があるそうなのです

そのような会社と取引が想定されるのであれば、株式会社一択です。

補助者
補助者

「株式会社」としか取引しないという姿勢は許されるのですか?

本職
本職

取引先には取引の「相手方選択の自由」がありますから、その他の法律などに反しない限りは問題ありません。

合同会社がおすすめできる方

副業の法人化

副業でしたら運営コストが低いほうがいいでしょう。ただし、取引先のと関係にご注意ください。

個人が相手の事業者

顧客が個人であれば運営コストが低いほうがいいでしょうし、株式会社でなければ取引しないという個人はそうはいないでしょう。

社会保険料を節約するための法人(いわゆるマイクロ法人)

このような法人であれば取引先は限られているでしょうから、合同会社が最適だと言えそうです。

本職
本職

合同会社の設立は考慮すべき点が多く、株式会社よりも難易度が高いため、「プロが作る会社」と言われています。設立の際はお近くの司法書士まで是非!