名古屋市名東区の司法書士 酒井健のブログ

戸籍の訂正をするにはどうすればよいか?

補助者
補助者

戸籍を取得したら、戸籍の記載が間違っていました。この場合どうすればいいのでしょうか?

本職
本職

次のとおり申請による方法3つ、職権による訂正2つと裏技(噂)1つの方法があります。

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家庭裁判所の許可を得て行う訂正(戸籍法第113条)

戸籍の記載に誤りがある場合の訂正方法については、軽微なものに関しては原則的に戸籍法第113条による訂正となります。
この規定によって訂正をするには家庭裁判所の審判が必要となります。

本条の要件のうち、
「法律上許されないもの」とは、戸籍に記載することが認められていない事項が記載されている場合です。
「錯誤若しくは遺漏があること」とは、戸籍の記載が一致していないことを指します。

申立権者
利害関係人

管轄裁判所
戸籍のある家庭裁判所
例えば、名古屋市と東京都千代田区に訂正すべき戸籍がある場合は、同一人である場合であっても、名古屋と東京の家庭裁判所に申し立てが必要になります。

申し立ての趣旨(例)
本籍 愛知県名古屋市○○区○丁目○○番地 筆頭者××の戸籍中、△△の父母の続柄欄に「二男」とあるのを「三男」と訂正することを許可する、との審判を求めます。

注意点
判決確定後、1か月以内に市区町村役場に戸籍の訂正手続きが必要です(戸籍法第115条)。

戸籍法第113条

戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる

戸籍法第115条 

前2条の許可の裁判があつたときは、1箇月以内に、その謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない

家事事件手続法第226条(管轄)※一部抜粋

次の各号に掲げる審判事件は、当該各号に定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
 1 氏又は名の変更についての許可の審判事件申立人の住所地
 2 就籍許可の審判事件就籍しようとする地
 3 戸籍の訂正についての許可の審判事件その戸籍のある地
 4 戸籍事件についての市町村長の処分に対する不服の審判事件又は町村役場の所在地

本職
本職

司法書士が取り扱う戸籍の訂正は、概ねこの規定による訂正になると思います。

家庭裁判所の許可を得て行う訂正(戸籍法第114条・創設的届出の無効確定の場合)

婚姻、認知や養子縁組などの市役所の対する届出は、「創設的届出」とされています。

創設的届出が行われ、その行為が無効であることを発見した場合の取扱いであり、この場合は戸籍法第113条の適用はなくなります。

なお、本条を適用するには、①戸籍の記載上明らかな場合と②訂正により利害関係人の身分関係に重大な影響を及ぼさない場合に認められます。
ただし、利害関係人の承諾がある場合は、身分関係に重大な影響を及ぼしても申立は認められることとなります。

もちろん、この規定によって訂正をするには家庭裁判所の審判が必要となります。

申立権者 管轄裁判所 注意点
戸籍法第113条の場合と同じ

本職
本職

原則として婚姻無効等の実体関係をまず裁判で確定させて、本条による申立てをすることとなります。少しわかりにくい条文ですが、次項の116条との違いと併せてご覧いただくとわかりやすいと思います。

戸籍法 第114条

届出によつて効力を生ずべき行為(第60条、第61条、第66条、第68条、第70条から第72条まで、第74条及び第76条の規定によりする届出に係る行為を除く。)について戸籍の記載をした後に、その行為が無効であることを発見したときは、届出人又は届出事件の本人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。

確定判決に基づく訂正(戸籍法第116条)

嫡出否認、認知の無効、協議離婚の無効など実体的身分関係を確定する効力を有する判決又は同一の効力を有する審判などによる訂正方法です。

この方法では、訂正範囲が明らかな実体上の判決がある場合であれば、別途訂正の申立ては不要となります。

戸籍法114条との違いは、114条は、許可審判の主文(申立の趣旨に対応)で訂正の範囲が具体的に明示されますが、116条では「訂正事項を明確ならしめる証拠方法として確定判決を要する趣旨であり、判決の主文と理由を総合して訂正範囲が明確にされるならば」、訂正を可能とするものです(最判昭和32年7月20日)。

すなわち、判決主文及び理由中で戸籍の訂正すべき個所が明らかであれば、114条の手続きを経なくても116条を適用し戸籍の訂正ができると考えられます。
司法書士をはじめとした専門家が、116条が適用できないような判決を得ることは考えにくいため、114条を使うケースはごくまれなように感じます。

一方で、戸籍法113条との違いは、113条の適用範囲はあくまでも誤記のような軽微なものである必要があり、関係人の身分関係に重大な結果をもたらすような訂正については116条の範囲と考えるといいと思います(反対説もあります)。

戸籍法第116条

1 確定判決によつて戸籍の訂正をすべきときは、訴を提起した者は、判決が確定した日から1箇月以内に、判決の謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。
2 検察官が訴を提起した場合には、判決が確定した後に、遅滞なく戸籍の訂正を請求しなければならない。

本職
本職

他にも戸籍法第59条に基づく訂正もありますが、レアケースなので割愛します。

法務局長の許可を得てする訂正(戸籍法第24条)

「戸籍の記載、届書の記載その他の書類から市町村長において訂正の内容及び事由が明らかであると認めるとき」で、法務局長の許可がある場合、市町村長は戸籍の訂正をすることができます。

この規定を適用するのであれば、代理人としては、市町村に対して職権訂正を促すという対応になるかと思います。

なお、この規定に基づいて職権訂正をするには、戸籍上や届出や関係書類によって明白な誤りがある場合に限られるのが、上記3つの訂正方法との違いになります。
したがって、申請書の保存期間が過ぎていたりすると当該規定の適用は困難になると言えます。
また、経験上法務局長の許可を得るため少なくとも1~2か月程度の期間を要します。

戸籍法第24条

1 戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、市町村長は、遅滞なく届出人又は届出事件の本人にその旨を通知しなければならない。ただし、戸籍の記載、届書の記載その他の書類から市町村長において訂正の内容及び事由が明らかであると認めるときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合においては、市町村長は、管轄法務局長等の許可を得て、戸籍の訂正をすることができる。
3 前項の規定にかかわらず、戸籍の訂正の内容が軽微なものであつて、かつ、戸籍に記載されている者の身分関係についての記載に影響を及ぼさないものについては、同項の許可を要しない。
4 裁判所その他の官庁、検察官又は吏員がその職務上戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを知つたときは、遅滞なく届出事件の本人の本籍地の市町村長にその旨を通知しなければならない。

市町村長がする訂正

ごくごく軽微な訂正、例え都道府県群市町村名の誤記などは市長村長が職権で訂正することが可能です。

例えば、届出書の原本が市役所で保管されていて、誤記が明らかな場合などが挙げられます。

この場合も、代理人としては、市町村に対して職権訂正を促すという対応になるかと思います。

なお、訂正できるものに関してはほぼ先例によって定められています。

本職
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市役所で届出書の原本を保管しているケースはまあまああるので、まずこの方法から探るべきだと考えます。

裏技 何もしない

聞いた話になりますので定かではありませんが、相続登記申請などでは、ごく軽微な戸籍のミスに対しては、上申書を添付したり、もしくは何もしなくても登記申請が通ってしまうことがあるようです。

管轄法務局等の提出先にご確認いただければと思います。

しかし、原則的な処理からはかけ離れますので、ご自身の責任においてこの方法を採用いただければと思います。


参考文献

戸籍実務研究会編 戸籍訂正・追完の手引き (全訂) 日本加除出版(2007年)

本職
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