名古屋市名東区の司法書士 酒井健のブログ

戸籍の請求のやり方

補助者
補助者

相続などに使用する戸籍の請求のやり方を教えてください。

本職
本職

個人の方については、次の手順に従って請求をします(司法書士の請求については別の記事で書きます)。

この記事では、相続で必要となる戸籍請求について解説しています。この記事をご覧いただくと戸籍請求の流れがなんとなくつかめると思います。

免責事項

細心の注意を払って情報を掲載しておりますが、この情報の正確性および完全性を保証するものではありません。執筆時時点の法令を前提に記事を作成しており、法改正等によって結論が変わる可能性もあります。
なお、予告なしに、掲載されている情報を変更することがあります。


戸籍請求ができる範囲

戸籍請求は、誰のものでも勝手に取得することはできません。かといって自分だけのものしか取れないわけでもありません。
まずは戸籍が取得できる範囲を確認しましょう。

原則

戸籍に記載のある方(=原則日本国籍のある方)は、本人とその配偶者、直系尊属、直系卑属に関する戸籍を請求することができます

根拠は戸籍法第10条です。

戸籍法第10条

1 戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第24条第2項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる
2 市町村長は、前項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。
3 第1項の請求をしようとする者は、郵便その他の法務省令で定める方法により、戸籍謄本等の送付を求めることができる。

用語解説

直系尊属とは、自己の父母、祖父母、曾祖父母など、家系図だと上方向に居る人のことを指します。

直系卑属とは、子、孫、曾孫など家系図だと下方向に居る人を指します。

ちなみに、配偶者の親は、傍系尊属となり、直系尊属ではありませんので、固有の権限で戸籍類の取得はできません

例外

相続手続きでは、亡くなった方の兄弟や姉妹が相続人となることがあります。その場合は原則でご説明した戸籍法第10条による固有の権限で兄弟姉妹の戸籍を取得することができません。

その場合は、戸籍法第10条の2の規定により第三者の戸籍を取得する方法で取得します。

戸籍法第10条の2 第1項

前条第1項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
1 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
2 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
3 前2号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由

兄弟姉妹の戸籍請求をするためには「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行する」ことが要件となります。

相続手続をすることは「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行する」ことに該当しますので、戸籍を請求することができます

その際は、自己が相続人であることの説明資料として、簡易な家系図を書いて持っていき、亡くなった方との関係性を説明できるようにしておきましょう。

請求書をダウンロードして必要事項を埋める

各市町村には戸籍請求書のダウンロードページがありますので、必要事項を記入します。

証明書の種類として様々な種類が記載されていると思いますが、戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、除籍全部事項証明書(除籍謄本)、改正原戸籍謄本のすべてを選択し、必要通数の個所に各1通と記載してください(通常は1通あれば足ります)。

また、様式によっては、出生から死亡までの戸籍を請求する欄があったりします。詳しくは、(自治体によって請求書の様式が違いますので)請求する自治体にお尋ねください。

本人確認書類を準備する

戸籍を請求する際は、本人確認書類の提示が必要になります。郵送請求の場合は、このコピーを添付します。

基本的に運転免許証、マイナンバーカード(写真付き)のうち1点をご用意ください
その他の書類でも構いませんが、いろいろバリエーションがありますので、事前に請求する市町村にお問い合わせください。

戸籍法第10条の3

1 第10条第1項又は前条第1項から第5項までの請求をする場合において、現に請求の任に当たつている者は、市町村長に対し、運転免許証を提示する方法その他の法務省令で定める方法により、当該請求の任に当たつている者を特定するために必要な氏名その他の法務省令で定める事項を明らかにしなければならない
2 前項の場合において、現に請求の任に当たつている者が、当該請求をする者(前条第2項の請求にあつては、当該請求の任に当たる権限を有する職員。以下この項及び次条において「請求者」という。)の代理人であるときその他請求者と異なる者であるときは、当該請求の任に当たつている者は、市町村長に対し、法務省令で定める方法により、請求者の依頼又は法令の規定により当該請求の任に当たるものであることを明らかにする書面を提供しなければならない。

戸籍法施行規則第11条の2 ※一部抜粋

戸籍法第10条の3第1項の法務省令で定める方法は、次の各号に掲げる方法とする。
1 戸籍法第10条第1項、第10条の2第1項又は第2項の請求をする場合には、道路交通法第92条第1項に規定する運転免許証、出入国管理及び難民認定法第2条第5号に規定する旅券、同法第19条の3に規定する在留カード、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第7条第1項に規定する特別永住者証明書、別表第1に掲げる国若しくは地方公共団体の機関が発行した免許証、許可証若しくは資格証明書等、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第2条第7項に規定する個人番号カード又は国若しくは地方公共団体の機関が発行した身分証明書で写真を貼り付けたもののうち、いずれか1以上の書類を提示する方法
2 戸籍法第10条第1項又は第10条の2第1項の請求をする場合において、前号に掲げる書類を提示することができないときは、イに掲げる書類のいずれか1以上の書類及びロに掲げる書類のいずれか1以上の書類を提示する方法ロに掲げる書類を提示することができない場合にあつては、イに掲げる書類のいずれか2以上の書類を提示する方法
 イ 国民健康保険、健康保険、船員保険若しくは介護保険の被保険者証、共済組合員証、国民年金、厚生年金保険若しくは船員保険に係る年金証書、共済年金若しくは恩給の証書、戸籍謄本等の交付を請求する書面に押印した印鑑に係る印鑑登録証明書又はその他市町村長がこれらに準ずるものとして適当と認める書類
 ロ 学生証、法人が発行した身分証明書(国若しくは地方公共団体の機関が発行したものを除く。)若しくは国若しくは地方公共団体の機関が発行した資格証明書(第一号に掲げる書類を除く。)で、写真をはり付けたもの又はその他市町村長がこれらに準ずるものとして適当と認める書類
3 戸籍法第10条第1項又は第10条の2第1項の請求をする場合において、前2号の方法によることができないときは、当該請求を受けた市町村長の管理に係る現に請求の任に当たつている者の戸籍の記載事項について当該市町村長の求めに応じて説明する方法その他の市町村長が現に請求の任に当たつている者を特定するために適当と認める方法

戸籍を請求する

準備が終わったらあとは戸籍請求するのみです。

なお、手数料は全国一律で下記のとおりとなっています。

種類手数料(1通あたり)
戸籍全部事項証明書(現在戸籍)450円
改正原戸籍・除籍全部事項証明書(除籍謄本)750円

以下では、市役所に出向いて請求するパターンと郵送で請求するパターンについてご説明いたします。

出向いて取得

市役所に出向いて取得する際は、下記の書類等が必要です。

  • 申請書
  • 本人確認書類(運転免許証等)
  • 手数料

なお、請求場所が遠方等出向くことが困難である場合を除いて、自ら出向いて取得することをおすすめします。相続で取得する戸籍は複雑であったり取得通数が多いため郵送料や手数料が高額になりがちなためです。

郵送請求

続いて市役所に対して郵送で請求する場合についてご説明いたします。この場合の必要書類等は次のとおりです。

  • 申請書
  • 本人確認書類(運転免許証等)のコピー
  • 行きの封筒
  • 返信用封筒(切手貼付必要)
  • 手数料相当額の定額小為替又は普通為替

いくつか注意点がありますから、下記でご説明いたします。

為替とは?

まずは定額小為替と普通為替についてご説明いたします。

郵便では、現金書留を除き現金を郵送することができません。そのため、相手方に送金する方法として為替による方法が用意されています。
代金を支払う側は為替を郵便局で購入し、郵便で送付します。受け取った側はその為替を郵便局で現金に換金する仕組みとなっています。

為替には定額小為替と普通為替の2種類があります。

定額小為替とは、100円、450円など一定の額面が定められた為替であり、その手数料は1枚につき200円となっています。
例えば1950円が必要であれば、1000円+500円+450円の3枚を送ります。もちろん組み合わせは自由で、750円+750円+450円でも構いません。
ただし枚数が増えるたびに手数料200円が掛かってしまうので注意が必要です。この場合ですと、600円の手数料がかかります。

一方、普通為替は、郵便局でこちらが指定した金額で作成してもらうことができます。手数料は5万円以下1枚につき550円です。
先ほどの例ですと、1950円の普通為替1枚送ることになりますから、手数料は550円となります。定額小為替を3枚以上送るケースでは普通為替の方が有利です

送り先

各市町村のホームページに送り先が記載してありますので、そちらの住所に送ってください。

なお、政令指定都市など大規模な都市では、各区役所に送付先が指定されていたり、「郵送請求センター」など集中して事務を行う部署を備えていることもあります。

指定された住所でないと、転送に時間が掛かったりしますので、必ず指定された住所にお送りください

一工夫

【工夫その1】
私ども司法書士であっても、実際にどれほどの量の戸籍を収集することになるかは、最後までわかりません。

工夫の一つとして事前に申請書を送っておいて、市役所に必要な料金を算出してもらい、後日為替を送るということも考えられます。
事前に料金がわかっているので、無駄な手数料を払う必要がないというわけです。

【工夫その2】
返信用封筒をレターパックライトにするのも一つの工夫です。戸籍1通くらいであれば、返信は定形郵便になると思いますが、それ以上になると重量の関係で定形外郵便になる可能性が高まります。
定形外郵便の価格とレターパックライトの価格はさほど大きくなりません。

また、レターパックライトは「準速達」扱いだと噂されています。現在、遠方からの普通郵便はかなり時間がかかりますので、レターパックを利用することにより時間短縮となります。ぜひ、利用を検討してみてください。

本職
本職

郵送請求の場合、一般の方は慣れない「為替」を取り扱う必要があり、ハードルが上がってしまいます。そんな場合は、お近くの司法書士に是非ご相談ください。